広島で中国人技能実習生による無差別殺人事件が起こってしまいました。
現在、日本で単純労働可能な外国人労働者は大きく分けて定住ビザの日系人と技能実習生のみ。日系人はリーマン・ショック後の派遣切りや製造業の空洞化で大きく減少してしまいましたが、技能実習生は賃金が安いこともあり、不況下でも増え続けているんです。
しかし、日系人が労働環境が割合しっかりしている製造業で主に就労しているのに比べ、技能実習生は人手不足や高齢化著しい第一次産業での雇用も盛んですから、労働環境の不備から今回のような悲しい事件が起こってしまうわけです。
もう一つの問題点として、技能実習制度は送り出し機関が技能実習生を採用し、事業協同組合などの監理団体が管理し、実習実施機関とよばれる企業が雇用するという形が一般的なのですが、これがよくボタンのかけ間違いを起こし、いろいろ問題が起きてしまうのです。問題が起きたら責任のなすり合い。JITCOも監査は熱心にやりますが問題が起きても責任なんか負いませんからね。
国も民間団体である組合が監理する団体監理型が起こす不正行為が多いことを把握しており、昨年11月に省令が厳格化されたのは関係者の皆さんは知っているでしょうし、外国人介護士の受け入れが民間に開放されないのも技能実習生制度のトラブル多発が原因であると私は推測しています。
ただでさえ奴隷制度と批判されている技能実習制度、これ以上問題が起こり、バッシングされると技能実習生制度自体立ちゆかなくなる可能性もあります。特に中国の技能実習生は震災以降の日本離れで優秀な実習生の採用が難しくなっていますし。安倍首相がTPPの交渉参加を表明したことですし(外国人労働者は増えるでしょうが、外国産の安い農産物が入ってくるので日本の農水産物も危機という両手の剣)、今後も趨勢を見守って行きたいと思います。
カキ生産支える外国人実習生
江田島市のカキ養殖加工の水産会社で8人が殺傷された事件は、中国など海外からの技能実習生が支える生産現場に波紋を広げた。技能習得よりも「出稼ぎ」の側面が強まる現場の実態が、職場での人間関係やトラブルにも影を落としている。
底冷えのする作業場にカキを打つ音が響く。広島市西区草津港の水産会社。作業をする16人のうち4人を除く12人は外国人。内訳は中国人3人とフィリピン人9人。日本人の男性社員(33)は「日本の若者は避けがちで、外国人に頼るしかない」と打ち明ける。
廿日市市の業者では中国人3人が働く。「家族と同じ」と岡島幸夫社長(46)。休憩時間には自らコーヒーを入れてねぎらう。
市内の別の業者で働く中国出身の王潔さん(25)は「日本語はうまくないけど、身ぶりを交えて積極的に話したい」。月給から寮費などを引かれると約11万円。そこから親元へ仕送りもする。
今回逮捕された中国出身の陳双喜容疑者(30)は、勤め先に同郷の同僚はおらず、日本語に不慣れで周囲と交流は少なかったという。
呉市の60代の生産者女性は「他の経営者が大声で怒鳴る姿も目立つ。悩む実習生もいるだろう」。草津港の水産会社の木村洋三社長(63)は「技術の習得が本来の目的だが、経営者も技能実習生も出稼ぎ感覚で捉えている面がある」と技能実習制度のあり方に疑問を投げ掛けた。(中国新聞’13/3/16)
待遇不満 過去にも刺殺事件 トラブル多い外国人実習制度
2013.3.15 09:41産経ニュース陳双喜容疑者は、「外国人研修・技能実習制度」を利用して来日していた。この制度は途上国への技術移転と人材育成を目的に平成5年から実施されているが、各地でトラブルが絶えない。
法務省によると、23年末時点で同制度を利用した約14万2千人の技能実習生が滞在しており、うち中国からが10万7千人を占める。多くが人手不足で悩む地方の工場や農家で働く。
しかし、長時間労働や、福利厚生が未整備といった劣悪な労働環境が問題化。18年8月には、千葉県木更津市の養豚場で中国人男性が待遇面での不満から受け入れ先の団体役員を刺殺する事件も発生した。
22年7月には改正入管難民法が施行され、2カ月間の日本語研修などを受ければ労働関係法令の適用対象となった。
だが、今月4日にも長崎地裁が、時給300~400円の低賃金で実習生を働かせたとして縫製会社に慰謝料など約1064万円の支払いを命じるなど、労働環境の改善には至らないケースも多い。
中国人実習生8人殺傷…「人使いが荒い」人間関係トラブルか?
水産会社で刃物振り回す 現場の水産会社広島県江田島市にあるカキ養殖加工の水産会社「川口水産」で14日午後4時半ごろ、男が刃物を持って暴れていると110番があった。社長の川口信行さん(55)と水産作業員の橋下政子さん(68)が死亡、男女6人も負傷した。県警は殺人と殺人未遂の疑いで、現場にいた中国籍の水産加工技能実習生、陳双喜容疑者(30)を現行犯逮捕。「人間関係にトラブルがあった」と供述している。
カキが有名な瀬戸内海の静かな島にパトカーや救急車のサイレンが響き渡った。県警によると、陳容疑者は14日、「調子が悪い」と言って仕事を休んでいたが、夕方になって突然現れ、刃物を持って暴れだした。ほかにスコップなど複数の凶器も持っていた。
社長の川口さんと作業員の橋下さんが死亡したほか、60~70代の従業員ら男女6人も負傷し、うち女性1人が重体。この女性は広島市消防局のドクターヘリで広島市内の病院に搬送された。重体や負傷の男女らは当時、カキの殻をむく作業場にいたという。
陳容疑者は「殺そうと思って殴ったりした」と容疑を認めている。胸に複数の刺し傷があり「自分で刺した」と話している。ヘリコプターで広島市の病院に運ばれたが、命に別条はない。
陳容疑者の友人の中国人男性によると、陳容疑者は昨年9月ごろから勤務。「社長は人使いが荒くて、言葉が悪い」「ばかと言われたりする」などと不満を漏らしていたという。
陳容疑者は動機について「人間関係にトラブルがあった」という趣旨の供述をしている。県警は、仕事上のトラブルがあった可能性もあるとみて調べている。
別の水産会社代表の話では、陳容疑者は川口水産の建物に居住。同社には陳容疑者のほかに外国人はいなかったという。
現場は漁港の海岸沿いで、フェリー乗り場に近い場所。近所の住人によると、付近にはカキの加工場が数軒並んでおり、養殖用のいかだから水揚げしたカキの殻を作業員がむく仕事をしている。
広島県名物として知られるカキの生産は、深刻な担い手不足の影響で、現在は中国や東南アジア各国から来日した労働者が支えている。加工場で殻むき作業に当たる人は「打ち子」と呼ばれ、事件があった江田島市ではここ10年で中国人研修・技能実習生が増加した。 2013年3月15日 06:00 スポニチ